「号砲は聞こえない」やばいんじゃないのって思ってたみたいな話ーー隣人13号とか
やがて君になる漫画版16話、「号砲は聞こえない」。体育祭のリレーと、その後の体育倉庫キスの話ですね。
これアニメで先に見たのかな?最初は「エロ峠」が印象的でした。
芹澤の面白いカメラアングルの登場や、都さんと沙弥香の会話、槙君と侑の会話(これも一種の告白ですね)迫力あるスウェーデンリレー。繋がっていくバトン。挿入歌もあっていい感じ。
燈子に見とれている侑と、「どうかしたのか」という友達に、こんどは距離感を感じずに陽のもとで「どうもしないよ」と言えるようになっている侑。
そして体育倉庫でのエロ峠。ビッグなイベントをこなしたご褒美としての、「倉庫でのキス」。
自分は初見、普通の感想とは別に「この体育祭の流れは何となくやばいな」って感じていました。
今考えると、自分がファイト・クラブとか、隣人13号とか、デトロイトメタルシティを見ていて、それらはハッピーな感じの結果を招いていないからでした。
精神的に死にかけている男たちが、夜な夜な酒場の地下に集まる。
ものすごい魅力(カリスマ)を持ったタイラー・ダーデンのもと、肉体的な盛り上がりの儀式を通して、みんなが一つになっていく。一つの考えしか持っていないかのようになっていく。固まっていく。そしてそれは、もう戻れないところまで行ってしまう。花火をぶち上げるかのようになる。
小学生時代の凄惨ないじめで、同級生に硫酸で顔を焼かれてしまった主人公。
顔を焼かれた瞬間、臆病な少年の心の中に「13号(じゅうさんごう)」という凶暴な別人格が宿る事となった。
この二人の人格はふたりでひとりなので、臆病なほうが普段の生活をしていて、ストレスがかかったり衝動がわいた時にアグレッシブな方が出てきます。
臆病な十三は同級生を殺すことに大筋合意なものの、まだ決心がついていません。
しかし、ストレスが、隣人からの苦情が、証拠を見られたから、敵意を向けられたから、と、二人はどんどん殺人のベントをこなしていきます。
イベントの後、心象風景で、鉄筋コンクリートの小さな倉庫が映し出されます。
二人はその中で、ハードビート(心臓の鼓動)をかけて踊っています。
二人は心臓の音(肉体的盛り上がり、興奮)により、同じリズムで同調していき、意志が一つになろうとしています。
もちろん、この精神世界が終わった後の現実でも、リードを取って主人格になるのも、十三号(アグレッシブなほう)になりました。
という事で、隣人13号にも、肉体的盛り上がりを背景に、流されてしまったがゆえに二つあるはずの心が、一つの心のようになってしまうというシーンがあります。
なので隣人を思い出してからは、怖いイメージも付加されてしまいました。ホラー要素。
もちろん二人が侑日が差し込む体育倉庫でキスしてるだけでもすごくいいシーンなんですけどね!
心臓の音(殺人や復讐への思い、本能)に流されて、13号に取り込まれてしまった十三。
私もそっちに行きたいけれども、何かわからないなりにも立ち止まることが出来て、でも心臓の鼓動は感じている侑。「私のじゃない」と、ごまかしつつも冷静であろうとしています。
キャラとストーリーの違いが出ていますね。
仲谷先生が以前インタビューで言っていたのが、汚いことを綺麗に表現するのが好きという事です。
自分は逆で、汚く表現されていることから普通の事を見出すのが好きなので、こういった感想になったんだと思います。
あと少し踏み出せば勢いに乗ってしまえる、そんな時の葛藤という似た状況を描いてあると思うシーンなんですけれども、片方はこんなにきれいに、片方はこんなに汚く表現出来るんだなって、見比べてみて凄いと思いました。